良品探訪の旅

デザイナー深澤直人氏とLAMYな集い 
2009.07.22

日本一のLAMYファンが経営する文具店が弊社だと自負しています。 LAMY製品の殆どを在庫していますし、ある方を通じ運よくハイデルベルグのLAMY社を訪れる機会にも恵まれました。 今日は46年ぶり皆既日食の日ですが、そのことよりも私にとって興味深いことが銀座にありました。

銀座松屋7階デザインギャラリーにおいて、7月22日から8月17日まで「LAMYドイツのデザインの精緻」の無料展覧会が開催されています。 そこにはLAMYファンなら誰でも知っている製品の数々とそのバラバラの部品が並べられ、部品からそれを作る道具までが 全てドイツの社内で作りこまれた質実剛健なる Made in ドイツの世界を体感することができます。 その初日の本日、同会場貴賓室において展覧コミッショナーを務めるデザイナーの深澤直人氏とLAMY社のエリッヒ・ダニエル取締役を招いて オープニングレセプションが開催されました。 プレスをはじめ業界を代表する方々がお集りになったパーティでしたが、私にとって嬉しいことがありました。 ハイデルベルグでお会いした以来の久しい3名の方と再会ができたからです。 LAMY社のダニエルさん、デザイン誌「RealDesign」編集者の山内さん、そして日本とLAMYのかけ橋的な存在でいらっしゃる酒井さんです。 数日前に発売されたRealDesign9月号78頁の取材のため山内さんがハイデルベルグを訪れた2月に、実は私もLAMY社をおじゃま したのでしたが、まさか東京で再び一緒にお会いできるとは思いませんでした。 レセプションでは取材陣のために用意された記者会見の場にて、深澤直人氏とLAMYのダニエル取締役、そして通訳として酒井さん が様々な質問に答えてくれました。LAMYファンを魅了したその空間で語られた印象的な彼らのインタビューをここにまとめます。

【深澤直人】全ての製品の部品とその道具をドイツ国内で作るのに、デザイナーは一切社内に内包しないという姿勢のLAMY社には以前から 興味がありました。そんなある日、2代目社長のDr.ラミーが私のデザイン事務所に突然知人の紹介で現れたのです。 私のことはデザイナー業界のネットワークで全て調べてきたそうです。これまでの仕事も今手がけているデザインのことさえもです。 一通りLAMYの会社説明を自分の言葉でした後で、「次回はドイツで会おう」と言って彼は帰国しました。 本当に航空券が送られてきたので、会社のあるドイツのハイデルベルグを訪れると、非常に綺麗でデザインセンスに富んだオフィスに迎えられました。 全てを隣接敷地内で組み立てている工場、効率的な物流倉庫、レストランを思わせるカフェテリア、屋上緑化などの説明が済むとDr.ラミーが最後 に私に聞きました。「LAMYをどう思いましたか?」と。 「もちろん、一緒に仕事をさせてください」と答えた私は、LAMYの新製品の企画に関わる機会を得たのでした。 ものづくりの考え方やデザインの緻密さにおいて長い時間をかけて連絡をとり合い、皆で情熱を傾けた時間は私にとって素晴らしい体験でした。 他社から一切の模倣をしないという精神が根底にあるので、とにかく企画が起きてから何年も時間をかけることは当り前で、今日発表されたDialog3 という商品も6年を要していると聞きます。 そしてDr.ラミーのすごさは連絡の方法でも際立っていました。 彼からの連絡は、全て彼の直筆の手紙が日本に送られてきたのです。ペンメーカーなのだから当たり前とは今の時代は言い難いはずなのにです。 後で知った話ですが、最初日本に来て私と会った時は、同行していたLAMY社のスタッフには適当なことを言って内緒にして私のオフィスに 来たそうです。大胆に業界を引っ張り経営革新を起こす一方で、慎重な部分をもバランスよく持ち合わせる企業として改めて感心した次第です。 そして長い年月とプロセスによって私とLAMYがコラボレートしてできた製品が、昨年に発表した「notoノト」です。

【エリッヒ・ダニエル取締役】今回私が社長の代理として日本のこの会場を訪れるにあたって挨拶をどうしようかと考えていると、Dr.ラミーが私に こう言いました。「君はあまり話す必要はない」と。 どうしてかと訊ねると「たとえ君が黙っていても展示された製品がLAMYという会社のことを語ってくれるからだよ」と話してくれました。 LAMYの製品の一つひとつに、企画から製品化され販売されるまでには本当に多くの時間をかけています。 現在も社内に様々な製品の企画やデザインがありますが、それらがいつ完成するのか誰にもわかりません。それほどにハイクオリティなものを たくさんのプロセスによって作り込んでいきたいと願っているからです。 日本の多くのLAMYファンによってメーカーが支えられています。 ですが私たちは決して伝統にあぐらをかいたりしません。全ての方々がいつもLAMYから新たな発見を求めて欲しいと思います。 数ヶ月後、来年と進化し続ける私たちLAMY社に今後ともどうか期待をしてください。